【連載】華と学ぶやさしい医療ICT | 第2回:医療情報の標準化

【連載】華と学ぶやさしい医療ICT | 第2回:医療情報の標準化

華と学ぶ やさしい医療ICT

こんにちは、華です。
先日、電子カルテの入れ替えを相談されたのですが、「電子カルテは標準化があまり進んでいないからデータの移行が難しい」と言われました。前回の医療ICTの歴史で、カルテや画像をデジタル化するのは、情報共有をスムーズにするためって教わったのに、標準化が進んでいないとは、不思議ですね。これは標準化について勉強する必要を感じましたので、皆さんも一緒に勉強しましょうね。

厚生労働省標準規格

医療機関の内部や異なる医療機関間で、医療情報を相互に活用するためには、必要な情報がいつでも利用可能となるよう、医療情報システムの標準化は必要不可欠です。それができなければ、地域包括ケアシステムも普及はなかなか進まないでしょう。そこで、標準的な形式のメッセージや標準とされるコードを用いて設計することが必要となります。
厚生労働省は、標準化活動を行う学会や民間の規格制定団体が参画する協議会において標準規格(厚生労働省標準規格)をまとめ、普及を図っています。以下がこれまでにまとめられた標準規格の一覧です。

<厚生労働省標準規格>
HS001 医薬品HOTコードマスター
HS005 ICD10対応標準病名マスター
HS007 患者診療報提供書及び電子診療データ提供書(患者への情報提供)
HS008 診療情報提供書(電子紹介状)
HS009 IHE統合プロファイル「可搬型医用画像」およびその運用指針
HS011 医療におけるデジタル画像と通信(DICOM)
HS012 JAHIS臨床検査データ交換規約
HS013 標準歯科病名マスター
HS014 臨床検査マスター
HS016 JAHIS 放射線データ交換規約
HS017 HIS,RIS,PACS,モダリティ間予約,会計,照射録情報連携指針(JJ1017指針)
HS022 JAHIS 放射線データ交換規約
HS024 看護実践用語標準マスター
HS026 SS-MIX2ストレージ仕様書および構築ガイドライン
HS027 処方・注射オーダ標準用法規格
HS028 ISO 22077-1:2015 保健医療情報-医用波形フォーマット-パート1:符号化規則
HS031 地域医療連携における情報連携基盤技術仕様

レセプトの電算ファイル
レセプト(診療報酬明細書)データについては、2006年~2009年にかけて、レセプト電子化の義務化や補助金など積極的な厚生労働省の政策により、電子化を進めたことで、標準化が進んでいます。これは「レセプトの電算ファイル」と呼ばれるものです。その結果、レセプトコンピュータのデータ移行は比較的、スムーズに行えるようになっています。また、レセプトデータを活用したチェック行為や経営分析も行えるようになりつつあります。

DICOMとHL7
画像データについては、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)が一般的に活用されています。DICOMとは、CRやCT、MRI、内視鏡・超音波などの検査画像機器と医用画像システム、医療情報システムなどの間でデジタル画像データや関連する診療データを通信したり、保存したりする方法を定めた国際標準規格です。この規格ができ、標準化が進んだことで、検査画像データのやり取りがしやすくなりました。
DICOMが画像データの標準規格である一方で、文字や数値データはHL7(Health Level 7)と呼ばれる標準規格が存在します。検査や画像については、このDICOMやHL7といった標準規格が存在することで、検査画像機器とシステム間の連携システム同士の連携がスムーズに行えるようになりました。厚労省もこれらの標準規格に則りシステム開発・連携を行うことを推奨しています。

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SS-MIX
2006年度に厚生労働省は、さまざまなインフラから配信される情報を蓄積するとともに標準的な診療情報提供書が編集できる「標準化ストレージ」という概念に着目し、すべての医療機関を対象とした医療情報の交換・共有による医療の質の向上を目的とした「厚生労働省電子的診療情報交換推進事業」(SS-MIX:Standardized Structured Medical Information eXchange)を開始しました。
SS-MIXとは、記録された医療情報の電子化・標準化に向けた啓発活動の一環として、具体化したパッケージウェアの普及を行うものであり、「パッケージウェアの開発」「ドキュメントの整備」「各ベンダによる同一の規格を実装したシステムの開発と普及」を行う事業のことです。
電子カルテシステムや地域連携システムの連携においても、SS-MIXに対応していることが要件として、たびたび盛り込まれています。

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医療情報化基金の創設

このように、これまで医療情報の標準化は長い年月をかけて行われてきました。しかしながら、強制力がなかったため、すべてのメーカーがこれらの標準化されたコードに則ってシステム開発をしているわけではないのが現状です。
しかしながら、標準化の流れを一気に加速すべく、政府は新たな施策を発表しました。政府は、2019年度予算案で、社会保障の充実策として、医療現場でのICT化を支援するための基金「医療情報化基金」を創設するとし、300億円を予算計上しています。
この基金の対象事業は、電子カルテの標準化に向けた医療機関でのシステム導入の支援などです。これを契機にして、一気に標準化が進むことを期待します。

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第2回は「医療情報の標準化」についてご説明しました。いかがでしたでしょうか。
次回は、「プラットフォームという考え方」についてお伝えします。

★今後の予定★
(第1回)医療ICTの歴史
(第2回)医療情報の標準化
(第3回)プラットフォームという考え方
(第4回)画像・検査の管理
(第5回)データを経営に活かす
(第6回)クラウド社会とリスク対策
(第7回)効率的なシステム構築
(第8回)「ソフト」と「ハード」を分けて考える
(第9回)プライベートクラウド
(最終回)AI・RPAの医療における可能性

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