【連載】華と学ぶやさしい医療ICT | 第5回:データを経営に活かす

【連載】華と学ぶやさしい医療ICT | 第5回:データを経営に活かす

華と学ぶ やさしい医療ICT

クラウドってなんだろう?

「クラウド」って言葉、最近よく聞きますよね。
クラウドとは、正式にはクラウドコンピューティング(Cloud Computing)と言います。クラウドは日本語に訳すと雲ですね。インターネットの先に企業が運営するサーバがあり、それを雲の上に見立てて表現した言葉です。

ちなみに、企業管理するサーバ群をクラウドと呼び、ユーザー側が管理するサーバをオンプレミス(on-premises)なんて呼んだりします。今回は、たくさんのIT用語が出てきますので、その都度解説していきます。

クラウドのことをかつては「ASP」と呼ばれている時代もありました。ASPとは、「Application Service Provider」の略で、業務用アプリケーションソフトの機能をネットワーク経由で顧客に提供する事業者、ないしはサービスのことです。
そして、「SaaS」と呼ばれるようになりました。SaaSとは、「Software as a Service」の略で、ソフトウェアを利用者側に導入するのではなく、提供者側で稼働しているソフトウェアをネットワーク経由で、利用者がサービスとして利用する仕組みを指しています。「ASP」と「SaaS」は大きく意味合いは異なりません。時代とともに言葉が変化していくことは、IT業界では良くあるのです。
この仕組みは最近では「サブスクリプションモデル」なんて言い方もしています。モノを購入するのではなく、利用期間に応じて料金を支払います。

いずれにしても、サーバの置き場所を利用者側から企業側に移し、ソフトを保有する時代から利用する時代に変わってきていると言うことです。



医療の世界でのクラウド解禁

インターネットやスマートフォンの普及が進み、私たちの周りにはクラウドサービスが溢れています。メール、スケジューラー、SNS、路線案内、地図など、1日に何度もクラウドサービスを使用しています。これらのクラウドサービスのおかげで、わたしたちの生活は格段に便利になりました。ネットとスマホさえあれば、他はなくてもある程度こと足りる時代となったのです。

医療の世界でクラウドが利用できるようになったのは2010年に遡ります。これは医療ICTの歴史で少し勉強しましたね。2010年に厚労省が通知した「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正で、カルテや検査画像などの電子媒体を企業が運用するサーバで管理することが認められ、医療分野でのクラウドサービス利用が実質解禁となったのです。医療の世界でクラウドが利用できるようになってから、9年が経ち様々なクラウドサービスが始まっています。

クラウドサービスが電子カルテ周辺システムの環境を盛り立てる

クラウドサービスが普及することで、電子カルテにつながる様々なシステムもクラウド化していき、電子カルテ周辺市場が活況化していっているように感じます。
クラウドサービスはシステム同士が接続インターフェイスの使用を公開し合うことで、スムーズに連携することを可能としています。この仕組みを「API」と呼んでいます。APIとは「Application Programming Interface」の略称です。
これが進めば、病院の基幹システムである「電子カルテ」や「レセプトコンピュータ(以下、レセコン)」との連携がスムーズになり、そこに新たな市場が生まれ、活性化していくのです。その一つの例が「経営管理システム」です。

経営管理ニーズ

病院の多くは経営管理を行うための入力ツールとして、電子カルテに期待しているところが多くあります。

従来、病院が経営管理データを作成する場合、レセコンのデータをCSVで抽出し、それをExcelなどで加工して管理を行ってきました。経営管理室ではこれらのデータを毎月会議資料として作成し、会議メンバーに配布するという仕事が大きなウェイトを占めてきました。この作業を「もっと簡単にできないか」という現場の要望を、電子カルテ導入の検討時によく耳にします。

当時は病院側が独自に仕組みを作っていたり、電子カルテのカスタマイズとして電子カルテメーカー側に作成を依頼していたりしました。そこから、電子カルテにつながる「経営管理システム」が開発されるようになり、それがクラウド化していったという経緯があります。

また、今ではこの業務を「RPA」という仕組みを利用するケースも出てきています。RPAとは、「Robotic Process Automation」の略です。一連の業務をプログラミングされたロボットと称されるシステムで、業務を自動で代行する考え方です。毎月、同じ情報リソースから同じフォーマットで作成する「経営管理データ」はRPA活用にうってつけのモデルではないでしょうか。

「情報」は作ることが目的ではなく「活かす(活用する)」ことが目的です。ましてや、データを作るだけの作業にスタッフが専念しているのであれば非常に非効率であると言わざるを得ません。活用するためには、作る作業を極力減らしていく必要があったのです。




次回は、「クラウド社会とリスク対策」についてお話します。楽しみにしていてください。

★今後の予定★
(第1回)医療ICTの歴史
(第2回)医療情報の標準化
(第3回)プラットフォームという考え方
(第4回)画像・検査の管理
(第5回)データを経営に活かす
(第6回)クラウド社会とリスク対策
(第7回)効率的なシステム構築
(第8回)「ソフト」と「ハード」を分けて考える
(第9回)プライベートクラウド
(最終回)AI・RPAの医療における可能性

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