【連載】 華と学ぶやさしい医療ICT | 第10回:AI・RPAの医療における可能性

【連載】 華と学ぶやさしい医療ICT | 第10回:AI・RPAの医療における可能性

華と学ぶ やさしい医療ICT

最近、「RPA」という言葉をよく耳にするようになりました。

「RPA」とはRobotic Process Automationの略で、これまで人間が行ってきた事務作業の一部あるいはすべてを、ロボットを使って自動化する取り組みです。
ちなみに、ここでいうロボットとはパソコン上で行われる仕組みのことで、SF映画に出て来るようなアンドロイド型のロボットとは異なりますのでご注意ください。

少子高齢化が進む我が国において、現在労働人口の減少(人手不足)が大きな問題となっていますね。その解決策として、労働力の「有効活用」や「生産性の向上」について議論が行われており、従来よりも少ない人数で生産力を高めるためのひとつの手段として、現在、RPAが注目されているのです。



RPAは3段階

RPAには、一般的に3段階の自動化レベルがあるとされています。
現在のRPAの多くはクラス1というレベルで、「定型業務」をロボットで自動化したものです。具体的には、従来ホワイトカラーが行ってきた大量の事務作業をRPAが処理することで大きな効率化が進みます。大量な事務作業がある金融機関などが先行して導入しています。

ロボットは一度覚えた方法を正確に間違いなく実行できます。それも24時間365日行えるのです。ロボットはいくら働いても、「疲れた、休みをくれ」とは言いません。システムが故障しない限り、黙々と同じ作業を続けることが可能なのです。生産性向上に大きく寄与することができると考えられています。

次期レベルのクラス2は、AIなどと連携して「非定型業務」でも一部は自動化され、クラス3は、より高度なAIと連携することで、業務プロセスの分析や改善だけでなく意思決定までを自動化できるようになります。



医療分野でAIの活用が始まる

ここで「AI」という言葉が出てきましたので、これについても解説しておきましょう。
AIとは、Artificial Intelligenceの略で、日本語では「人工知能」と訳されています。

AIの歴史は古く1950年代にさかのぼります。現在は第3次ブームと言われており、ディープラーニング(深層学習)技術の発展やビックデータの普及などで、大量のデータ(画像や映像も含む)から必要な情報を抽出することが可能になっていると言われています。
AIの活用は様々な分野に広がりを見せており、医療分野でも実証実験および実用化が始まっています。



自動精算機の導入で業務効率化

医療の世界でもいくつかRPAに近い取組が始まっています。
例えば、電子カルテ(レセコン)と連動して、自動的に精算業務を行う自動精算機は、RPAに近い考え方です。

従来は、電子カルテに入力された情報をレセコンが診療報酬点数に置き換え、患者の自己負担額を計算しています。ほとんどの医療機関では、その確定した金額を見ながらレジスターに手入力し精算業務を行ってきました。
それらの業務を、電子カルテに連動した「自動精算機」を導入することで、多くのプロセスが自動化され、患者自らが診察券を入れるだけて、本日の負担額が表示され、釣銭も自動で出てきます。その結果、入力間違いや釣銭の渡し間違いはなくなるのです。

現在、自動精算機は大病院から診療所まで徐々に導入が進んでいます。



RPAで自動的に統計データを作成

医療機関では定期的に経営に必要な統計データをエクセルなどを使って算出しています。
人間が行う場合の一般的な流れは、電子カルテからCSVでデータを抽出し、これをエクセルなど表計算ソフトで加工し、グラフなどで表示させるという作業です。この業務もRPAを使うことで、毎日自動的に欲しいデータのグラフが定型のフォーマットで作成することが可能になるのです。
これを実現することで大きな業務効率化となります。



将来的には、レセプト点検、レセプト請求もRPAを活用できるのではないか

医療機関の事務業務で大きな割合を占める「レセプト請求業務」においても、RPAは将来的に活用できるのではないかと考えます。

例えば、毎月レセプト時期になると、自動的にレセプトチェックを行い、問題点を修正し、正しいレセプトを作成し、それを決まった時期に請求するということが実現できるようになるのではないでしょうか。 この作業にAIが加われば、過去のレセプトの返戻・査定状況を分析し、地域性や個別性を配慮した対応が可能になるかもしれません。これはまだ始まっていませんので、あくまで希望としてあげておきます。

このように、RPAは医療の分野でも十分に活用可能な技術です。現場で日々作業を見ていて非効率だと思っていることこそ、RPAが得意とするところです。RPAに事務作業を担わせることで、本来ヒトが行うべきことに集中することができるようになれば、医療の質向上に資することが可能と、医療分野のRPAの進展に期待します。


これで「華と学ぶやさしい医療ICT」は最後となります。
今までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
また連載を考えていますので、そのときはどうぞよろしくお願いします。

★もくじ★
(第1回)医療ICTの歴史
(第2回)医療情報の標準化
(第3回)プラットフォームという考え方
(第4回)画像・検査の管理
(第5回)データを経営に活かす
(第6回)クラウド社会とリスク対策
(第7回)効率的なシステム構築
(第8回)「ソフト」と「ハード」を分けて考える
(第9回)プライベートクラウド
(最終回)AI・RPAの医療における可能性

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