【連載】 華と学ぶやさしい医療ICT | 第7回:効率的なシステム構築

ヘルスケア

電子カルテってなんだろう?


そもそも電子カルテとは、何を指す言葉なのでしょうか。


医療機関のIT化は、電子カルテが長らく中心的な役割を担ってきました。そこで、今回は電子カルテとは改めて何か(どのような役割)考えることから始めたいと思います。

電子カルテは、狭義の意味では「カルテ(診療録)をデジタル化」するシステムと言えます。そのため、電子カルテはペーパーレス化を進めるシステムとして感じるのでしょう。
一方、広義には電子カルテとオーダーリング(オーダーエントリーシステム)を含めて考える場合です。この場合、電子カルテは医療機関にとっての基幹システムとなります。電子カルテに入力された情報をオーダーリングが、各部門に伝達する情報共有を目的にしたシステムとなるのです。



電子カルテを「生産性向上ツール」と考える

電子カルテが生まれて約20年が経ちました。
医療機関では電子カルテの導入に際して、「電子カルテは、何のために導入するのか」という議論が繰り返して行われてきました。導入に際して、「費用対効果」という言葉が先行し、電子カルテを導入したら「どんな効果があるのか」「費用分の価値を見いだすことができるのか」という議論が行われてきたのです。

昨今、急速に進む少子高齢社会を受けて、人手不足が深刻な社会問題となっています。政府は「働き方改革」を進めようと、様々な施策が打ち出されています。いま日本は効率的な働き方、すなわち「生産性向上」に取り組むことが、重要になっています。
これは医療機関にとっても他人事ではありません。いかに少ない投入量(インプット)で大きな生産量(アウトプット)を得るかを真剣に考える時代となっているのです。

そこで、電子カルテを「生産性向上のツール」と考えてはどうでしょうか。電子カルテを導入することで、業務を標準化・効率化し、生産性が高い運用に変えるという考え方です。



生産性を高める電子カルテの設定

電子カルテには、「テンプレート」や「セット」など、さまざまな入力支援機能が備わっています。これらの機能は、電子カルテを素早く入力するためのもので、導入時にベンダーのサポートを受けると、各医療機関の要望に合わせてカスタマイズしてもらえます。

これについては、診療行為とカルテ記載、診療報酬算定、そして病名登録という一連の業務をセットで考えることが大切です。これらを仕組化(システム化)することで、生産性向上に寄与できます。



電子カルテはチーム医療の血液(情報)を運ぶ仕組み


「電子カルテはスタッフばかり楽になって、自分は全く楽にならない」という苦情を医師の方から聞くことがありますが、「電子カルテは医師しか触ってはいけない」という思い込みがあるためです。

診療所も病院もチーム医療を進めていくのであるならば、電子カルテはチーム医療の血液(情報)を運ぶシステムと考えるべきでしょう。医師、看護師、薬剤師、リハビリ、医療事務など関係職種がそれぞれ助け合える関係づくりを行うシステムと位置付ける必要があるのです。



事務作業のワークシェアリング

たとえば、外来の診察において、医師だけでなくスタッフも電子カルテを操作する運用を行っている医療機関では、電子カルテに関する業務の負荷が分散することで、電子カルテ導入前よりも楽になっています。電子カルテは医師だけのものからスタッフ全員のものという意識に変えることで、事務作業のワークシェアリングが進むようになるのです。

そのためには、医師の側に医療クラーク(医師事務作業補助者)を配置することが一つの方法でしょう。
医療クラークを置くことで、診療効率があがり、医師が診療に集中できる環境が整い、その結果、生産性が高まるのです。



電子カルテと部門システムは連動実績を重視する


診療所には「部門」という考え方があまりないため、電子カルテにオプションとして、予約システムや画像管理システム、検査システムなどの周辺システムが取り込まれるように発展してきました。
一方、病院では、電子カルテと部門システム(医事会計、看護部、検査科、放射線科、リハビリ科、栄養科など)が連携する仕組みを取っています。
これが診療所と病院のシステム構造における大きな違いです。病院がレセコン、オーダーリング、電子カルテと順を追って発展してきた理由でしょう。

この電子カルテと部門システムの関係ですが、大規模病院の場合と中小規模な病院の場合では導入の流れが大きく異なるようです。それは、ベンダーの提案スタンスに表れています。

大規模病院では、各部門でそれぞれ要望するシステムを選定し、それと電子カルテを連動させるという仕組みを取っており、このシステム間連携には、ある程度の時間と費用が必要となります。

大規模病院のシステム構築イメージ



一方、中小規模病院はIT化投資に制約があるため、電子カルテや部門システムをそれぞれ選定するよりも、電子カルテが部門システムをセットで提案することが多いように感じます。その結果、電子カルテが決まればおのずと部門システムも決まってくるという傾向にあるのです。

中小規模病院・診療所のシステム構築イメージ



その背景には、電子カルテと部門システムの連携をスムーズに行い、全体としてのコストを抑えるためには、あらかじめ連携実績のあるメーカーを選んでおいた方がスムーズに進むためです。
このような考え方は、診療所も同じです。


次回は、「ソフトとハードを分けて考える」です。お楽しみに!

★今後の予定★
(第1回)医療ICTの歴史
(第2回)医療情報の標準化
(第3回)プラットフォームという考え方
(第4回)画像・検査の管理
(第5回)データを経営に活かす
(第6回)クラウド社会とリスク対策
(第7回)効率的なシステム構築
(第8回)「ソフト」と「ハード」を分けて考える
(第9回)プライベートクラウド
(最終回)AI・RPAの医療における可能性?

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